首都高で時速200キロ以上の速度で高級スポーツカー・ポルシェを運転して乗用車に衝突し、夫婦を死亡させた罪に問われている会社役員の男に、横浜地裁は27日、危険運転致死罪を適用し、懲役12年の実刑判決を言い渡した。時速200キロ超で車線変更を試み…会社役員の彦田嘉之被告(56)は2020年8月、神奈川県川崎市の首都高湾岸線で時速200キロ〜268キロで高級スポーツカーのポルシェ911GT2-RSを運転中に乗用車に衝突し、乗っていた内山仁さん(当時70)と妻・美由紀さん(当時63)を死亡させた危険運転致死の罪に問われている。ポルシェ911GT2ーRSは最高時速340キロという、高級スポーツカーのポルシェの中でも最高峰の性能を誇る車だ。事故現場は川崎市の首都高湾岸線下り線で、片側3車線の直線、最高速度は時速80キロだった。判決によると、彦田被告はポルシェの助手席に長男を乗せて、事故現場の手前6キロ地点から時速180キロ以上で走行。さらに、現場から約500メートル手前の地点では、最高速度を実に188キロもオーバーする時速268キロで一番右の車線を走り、真ん中の車線を走る車を追い抜いている。彦田被告は、前方でトラックが真ん中から右へと車線変更してくるのを目視した。ハンドルを左に切って、真ん中の車線に入ってこのトラックを追い抜いたが、その直後、右の車線に戻ろうとした際に、前を時速83キロほどで走行していた被害者の車に時速200キロで衝突した。危険運転致死罪の成立が焦点に検察側は、被告が「進行を制御することができないほどの高速度」で車を運転したと主張した。事故現場は直線で路面も乾いていたが、被告は最高80キロの道路を時速200〜268キロという極端なスピードで走行していた。検察は、これほどの速さでは、少しハンドルを切っただけでも車は大きく動き、ブレーキ操作も難しくなると指摘した。その結果、車線変更をしようとした際に車が横滑りし、前を走る車に激しく衝突して死亡事故を引き起こしたと主張。自動車運転処罰法の2条「危険運転致死傷罪」の「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」にあたり、危険運転致死罪が成立すると訴えた。これに対し、弁護側は「危険運転にはあたらない」と反論した。被告は「事故直前まで車は安定して直進しており、スピードが出ていても制御できていた」と説明。また、前の車にぶつからないようブレーキを踏んだ際に車が滑り、立て直そうとした結果の事故で、わざと無理な運転をしたわけではないと主張した。そのため、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」には当たらず、成立するのは危険運転致死罪ではなく、過失運転致死罪にとどまると訴えた。裁判所「常軌を逸した走行」横浜地裁は判決で、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」について、「速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行させることが困難な速度」と定義。本件の時速200キロ〜268キロという速度について、「超高速度であり、常識的にみて、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させる危険性を有する速度」と断じた。その上で、現場の状況について、「片側3車線の自動車専用道路であるから、走行車両が適宜車線変更するのは当然に予定されている」とし、「安全な車線変更等をすることが困難なほどの高速度で自動車を走行させることは、もはや道路の状況に応じた走行とは言えない」と断じ、危険運転致罪を構成する「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に該当すると判断した。自己中心的な運転態度次に判決は量刑について検討した。まず200〜268キロという速度については、「常軌を逸した超高速度」として「悪質極まりない」と厳しく非難した。亡くなった2人については、「全く落ち度のない被害者両名が受けた肉体的苦痛や無念さは計り知れず、遺族らが受けた精神的苦痛も大きい」と寄り添い、「被害結果は極めて重大」と指摘。彦田被告については、「自己の運転技術を過信し、高速度運転の危険性に対する意識が低下していたものと認められ、その自己中心的な運転態度は厳しい非難を免れない」とした。その上で、「速度は類を見ない高速度であって、相当重い部類に位置づけられる」とし、「被告人は十分に反省しているとは評価できない」としながらも、被害者や遺族に謝罪していること、二度と運転しないと約束していること、任意保険により損害が賠償済みであることなどから、懲役12年を言い渡した。