クリステン・スチュワート主演の新作コメディ映画『The Wrong Girls』が8月14日に全米公開される。幻覚剤によってテレパシー能力を得るという荒唐無稽な設定だが、サイケデリック化合物が脳の情報伝達に長期的な変化をもたらすという点では、近年の神経科学研究との意外な接点がある。もっとも、実際のテレパシーを薬物で実現できる仕組みは確認されておらず、その部分は依然としてSFの領域にある。■親友同士のトラブルと取り違えられたブリーフケースディラン・マイヤーの長編監督デビュー作『The Wrong Girls』が8月14日に劇場公開される。本作は、2人の友人が実験段階のサイケデリック化合物が入った小瓶を誤って摂取し、猫の心の声まで直接聞こえる持続的なテレパシー能力を身につけるという、ストーナーコメディらしい荒唐無稽な設定だ。しかし、2024年に発表された画期的な神経科学研究は、サイケデリック化合物が脳と外界との情報伝達のあり方に持続的な変化をもたらし得るという、映画の一見ばかげた発想が現実の科学と接点を持つことを示唆している。実際のテレパシーへの飛躍は、依然としてSFの領域にとどまっている。映画は8月5日、ロサンゼルスのロス・フェリス3でワールドプレミアを迎えた。配給会社Neonとアメリカン・シネマテークが共同開催し、この日のために全3スクリーンが使用された。8月14日には全米で拡大公開される。物語の中心となるのは、フランキー(クリステン・スチュワート)とモリー(アリア・ショウカット)という2人の親友だ。彼女たちは10年近くを大麻の煙の中で過ごし、互いの悪い決断を追認しながら、大人になることを避け続けてきた。モリーの恋人ジョシュ(ザック・フォックス)が同棲を提案する。それは、2人の友情がこれまで妨げてきた人生の前進でもあった。そこへ人違いのトラブルが起こり、フランキーは別人に渡されるはずだったブリーフケースを受け取ってしまう。中には、光る小瓶に入った実験段階のサイケデリック化合物が詰められていた。2人はその物質を摂取し、映画が「持続的なテレパシー能力」と呼ぶ力を発現させる。そこには、セス・ローゲンとクメイル・ナンジアニが心の声を演じる猫たちとの、種を超えた意思疎通も含まれる。薬物を手にしたことで、彼女たちは化合物を奪い返そうとする白いスーツ姿のデンマーク人の悪党たちに狙われる。悪党たちはフランキーとモリーを、劇中の表現を借りれば「使い捨ての人体実験の被験者」と見なしている。物語の中心にある問いは、ことさら暗く描かれているわけではない。本作は意図的にばかばかしく作られた映画だ。しかし、コメディの底には「他人の思考を聞くには何が必要なのか、それは化学的な手段で理論上実現できるのか」という、真剣で恐ろしい問いが横たわっている。物語は、騒々しさと奇妙な温かさを同時に備えた調子で進む。その原動力となるのは、10年に及ぶ友情から生まれた2人独特の相性だ。その友情は、互いの問題行動を助長する関係に変質しているが、どちらも手放そうとはしない。彼女たちを変化へと追い込むために、幻覚剤をめぐる騒動とデンマーク人の傭兵まで必要になる。それが本作の仕掛けであり、どうやら笑いの核心でもある。■シロシビンが脳ネットワークに実際に与える影響映画が図らずも接点を持つ科学は、単なる理論ではない。2024年7月、Washington University School of Medicineのジョシュア・S・シーゲル医学博士らの研究チームは、高用量のシロシビンを投与する前、投与中、投与後3週間にわたり、参加者1人当たり約18回のMRI検査を行って脳の変化を追跡した画期的な研究をNature誌に発表した。その結果は注目すべきものだった。シロシビンは、前頭前野に多く存在する5-HT2A受容体に作用するセロトニン作動性のサイケデリック化合物だ。研究では、対照物質として使われたメチルフェニデートよりも、脳の機能的結合を3倍以上強く乱した。メチルフェニデートは、リタリンの商品名でも販売されている中枢刺激薬である。機能的結合(FC)とは、異なる脳領域の活動がどの程度連動しているかを示すもので、大脳皮質、海馬、視床、小脳などが安静時にどのように情報をやり取りしているかを表す。シロシビンは、薬物の急性作用が生じている間、こうしたパターンを大きく変化させた。映画の設定とさらに深く関係するのは、一部の変化が薬物の作用が消えた後も数週間続いたことだ。具体的には、海馬とデフォルトモードネットワーク(DMN)の結合が持続的に低下した。DMNは、独立した個人としての自己感覚、社会的認知、内的な独り言など、自己参照的な思考に関わる。海馬は記憶や空間認識に関与している。この2つのシステム間の結合が長期にわたって低下したことは、軽視できない発見だ。サイケデリック化合物が、うつ病、依存症、心的外傷後ストレス障害の治療法として盛んに研究されている理由の一端を説明する可能性がある。薬物は単に一時的な高揚状態を生み出すだけでなく、脳の通常時のネットワーク構成を再編している可能性がある。映画で描かれるテレパシー能力の「持続」、つまりフランキーとモリーが薬物の急性作用が収まった後も能力を保っているという設定は、この薬理学的な発見と重なる。シロシビンは、脳のネットワーク構成に持続的な変化をもたらし得る。ただし、「1つの脳に起きる持続的な変化」から「2つの脳に同時に起きる、持続的で同期した変化」への飛躍は途方もなく大きい。それでも、研究者らが指摘するように、これは種類そのものの違いというより、程度の違いとしてとらえることもできる。■脳間インターフェース問題としてのテレパシー2013年、University of Washingtonのラジェッシュ・P・N・ラオ率いる研究チームは、人間同士を直接つなぐ初の脳間インターフェース(BBI)を実証した。その仕組みは薬理学的なものではなく、技術的なものだった。脳波計(EEG)で1人の参加者の脳から運動意図の信号を記録し、インターネット経由で送信する。続いて、経頭蓋磁気刺激(TMS)を使ってその信号を2人目の参加者の運動野に送り、その人物にコンピューターゲームのボタンを不随意に押させた。電極とノートパソコンを介し、キャンパスをまたいで、1つの運動信号のために2人の脳が直接つながったのである。同じチームはその後、この研究を複数人のネットワークへと拡張した。Scientific Reports誌に発表された2019年の研究「BrainNet」では、3人の参加者が脳間の信号伝達を使い、テトリスに似た課題に協力して取り組む脳間インターフェースが実証された。『The Wrong Girls』に登場する架空の化合物は、こうした工学的なBBIがハードウェアで行っていること、つまり1つの脳から信号を取り出し、別の脳へ確実に伝えることを薬理学的に実現しなければならない。理論上の障害は大きい。第一に、両方の脳へ同時に作用する化合物によって、神経の電気活動における時間的パターン、すなわち神経振動の周波数を同期させる必要がある。しかも、電極やTMSのような精密な標的設定は利用できない。第二に、仮に2つの脳の活動リズムを同期できたとしても、「神経のロゼッタストーン」と呼ぶべき問題が残る。人間の脳は、似た概念であっても人によって異なる神経パターンで符号化している。薬物によって共通の周波数を生み出すことと、意味を伝える共通の符号を持つことは同じではない。第三に、化学物質の作用は精密ではなく拡散的だ。薬物は血流を循環し、伝えたい思考を担うニューロンだけでなく、該当する受容体を備えたすべてのニューロンに作用する。こうした障害があるからといって、SFとしてのテレパシーの可能性が完全に閉ざされるわけではない。映画の設定がフィクションから現実へ移るために、どのような条件が必要になるのかを明確にしているにすぎない。■猫の心の声を聞くために実際に必要なこと映画の設定における異種間の要素は、科学的にはさらに不条理であると同時に、いっそう興味深い部分だ。イエネコ(Felis catus)は、そのよそよそしい印象から想像されるほど認知的に単純な生き物ではない。近年の研究では、飼い猫が聴覚情報だけを使って飼い主の位置を頭の中に描いていることが示されている。これは、人間の乳児における第5段階の対象の永続性にも相当する空間認知の一種とされる。社会的参照に関する研究では、約79%の猫が、軽い脅威を感じさせる物体と飼い主の顔を交互に見てから反応を決め、飼い主が示す感情的な合図に応じて行動を変えた。猫は強い愛着関係を築き、飼い主が不在のときには分離不安に似た発声を示すなど、双方向の感情的な関与も見せる。猫の大脳皮質には約2億5000万個のニューロンが存在する。犬よりは少ないものの、人間の感覚野や運動野に機能的に相当する構造を備えている。人間と猫の意識を薬理学的に結びつける場合、人間同士のBBIとは異なる問題が生じる。シロシビンが作用する5-HT2A受容体は猫にも存在するため、両者に同様のセロトニン作動性の変化が起きると仮定しても、人間の言語と猫の認知では、経験を符号化する方法が構造的に異なる。セス・ローゲンが演じるような形で「猫が話すのを聞く」には、神経活動の同期だけでなく、一種の翻訳層が必要になる。猫の固有受容感覚による身体地図、嗅覚による周囲の表現、社会的脅威の度合いといった情報を、人間が理解できる物語へ変換する仕組みだ。映画では、ローゲンとナンジアニの声が笑いに使われている。より哲学的に興味深い設定にするなら、人間の主人公が猫の言葉を聞くのではなく、猫の視点から世界を体験し、一時的に猫そのものになるという描き方が考えられる。その方が笑いは少なくなるが、SFとしてはより説得力がある。■デンマーク人の悪役とサイケデリック研究に残る倫理問題映画の敵役は、フランキーとモリーを「使い捨ての被験者」として連れ戻そうとする「白いスーツを着たデンマーク人科学者」だ。これは、現実の歴史を源流とするコメディの類型でもある。サイケデリック研究の歴史は、その記録が残る初期の数十年間から、本人の同意を得ない人体実験と絡み合ってきた。1953年から1963年まで活動していたCIAのMKULTRA計画では、マインドコントロール技術を開発する試みの一環として、本人に知らせずLSDなどの化合物を組織的に投与した。この計画は化学者シドニー・ゴットリーブによって運営され、大学や病院を含む80以上のフロント機関を通じて実施された。1973年には、議会の調査官が内容を検証する前に、ゴットリーブが記録の大部分を破棄した。残された情報は、エドワード・ケネディ上院議員が主導した1977年の公聴会で明らかになった。2024年12月には、米国家安全保障アーカイブとProQuestが、同計画に関する未公開文書1,200点以上を公開し、その規模と手法に対する社会的関心を再び呼び起こした。この歴史は、10年前とは異なる意味を2026年に持っている。サイケデリック医療が、本格的な研究の再興期を同時に迎えているためだ。FDAは2026年7月、サイケデリック支援療法の臨床試験に関するガイドラインを最終決定し、研究設計をめぐる長年の懸念に対応した。Compass Pathwaysは、年末までにシロシビンの新薬承認申請を行うことを目指している。この分野は、インフォームドコンセントをめぐる課題にも直面している。シロシビンによる知覚の変化は明白であるため、真の二重盲検試験を行うことはほぼ不可能だ。それでも研究者らは、正当な治療可能性を、倫理的に問題のある研究史から切り分けようとしている。映画のデンマーク人科学者はジョークとして描かれている。しかし、それは現実の重みを伴うジョークでもある。意識に作用する強力な化合物が、被験者を完全な人間として扱わない者によって開発されるという発想は、単な