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カーシェアの手軽さとレンタカーの安さを一つに「LCCレンタカー」で空白市場を開くバリュートープ【Monthly Pitchの起業家たち】
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この連載は、アーリーステージのスタートアップや投資家たちが毎月集う、クローズドなイベント「Monthly Pitch」の現場で出会った起業家を取り上げるシリーズです。登壇希望の方はこちらから 旅先に朝5時に出発して夜11 […]この連載は、アーリーステージのスタートアップや投資家たちが毎月集う、クローズドなイベント「Monthly Pitch」の現場で出会った起業家を取り上げるシリーズです。登壇希望の方はこちらから旅先に朝5時に出発して夜11時に帰ってくる。そんな旅程を思い浮かべたとき、まず、消えるのがレンタカーという選択肢だ。レンタカー店が開いていないからだ。このすれ違いを、店舗を構えず、車も駐車場も自社で持たないという方法で埋めようとしているのが、カーシェア型 LCC レンタカー「オールタイムレンタカー」を運営するバリュートープになる。詳しい仕組みを Mothly Pitch に登壇した同社代表取締役の佐久間晶夫氏に話を聞いた。早朝と深夜に、借りられる車がないレンタカー店の営業時間は現在、朝8時から夜8時が一般的で、かつては24時間営業の店も珍しくなかったが、佐久間氏の話によると、人手不足で夜通し人を置く運営が成り立たなくなったのだそうだ。一方、この市場はまだまだ余白がある。矢野経済研究所によると、国内のレンタカー市場規模は2025年に1兆669億円に達すると推計され、2030年には1兆2,045億円まで成長すると予測されている。興味深いのは車を借りられる時間は短縮傾向にあるという点だ。同社の2026年5月時点の利用データによると、借りる時刻か返す時刻のどちらかがレンタカー店の営業時間の外にある利用が、なんと全体の76%にのぼる。早朝の出発や夜の返却という需要が、店舗型の事業者には受け止められていないことが数字から伺える。そこでひとつ思い浮かぶ方もいるだろう。24時間使えるカーシェアでは代替できないのか?まず最初に台数が違う。全国レンタカー協会の集計では、国内のレンタカー車両数は116万8,522台(2025年3月末)。一方のカーシェアリングの貸渡車両数は約8.5万台(同時点)と桁が異なる。またカーシェアリングは、レンタカーと比べて買い物などの日常使いの比率が高いとする調査結果があり、業界大手のタイムズカーは、時間と距離に応じた料金体系を採用するなどレンタカーとは利用シーンが明確に異なる。当然、長距離・長時間の利用では、レンタカーとは料金構成が異なってくる。佐久間氏が解決しようとするのは、このレンタカー市場に取り残された課題だ。「私自身がレンタカーユーザーで、利用できる時間の短さに不便を感じていました。それなら人手に頼らないかたちで提供できないか、という発想から始めたのがこの事業です」(佐久間氏)。オールタイムレンタカーは、予約・解錠・返却・決済をアプリで完結する無人サービスだ。利用者は近隣の駐車スペースへ直接向かう。車のドアはスマートフォンで解錠する。「バーチャルキー」と呼ばれる仕組みで、鍵を受け取ることも触ることもなく、そのままエンジンをかけられる。返すときも同じ場所に停め、アプリで施錠して終わりだ。コンパクトカーなら12時間4,980円、24時間5,980円で借りることができ、佐久間氏によれば大手レンタカーチェーンの7割ほどの料金設定になっているという。佐久間氏によると、車の貸し出し場所は山手線沿線を中心に33拠点(2026年5月時点)あり、駅から徒歩でおよそ10分以内を目安に、月極駐車場やコインパーキングの一区画を借りてサービスを提供している。100台を動かす現在、バリュートープでは都心に置いた100台超(2026年5月時点)の車を動かしている。車両はすべてリースで、駐車場も既存のコインパーキングや月極駐車場の空いた区画を借りている。車も土地も持たないため、拠点を1つ増やすのに必要なのは駐車場の契約料と車載機の取り付け費用だけだ。コールセンター業務や定期清掃などは外注しており、各拠点に社員を常駐させずに運営することで効率化をはかる。問い合わせの一次対応も自動化を進めており、受電の35%発信の81%はすでに人を介さずに処理しているという話だった。これはカーシェアでもあるが、例えば給油などの作業の一部は利用者にも分担してもらっている。返却前にガソリンを満タンにし、車内を簡易清掃したうえで、アプリで返却チェックと施錠をする。佐久間氏によると、借りた場所に戻すのが前提で、乗り捨ては受け付けていない。その代わり、削減できるコストの分、サービス提供価格を抑えられるため、利用者にとってもメリットがあるとしている。同社がこのサービスを「LCC レンタカー」と呼ぶのは、このように格安航空と同じ提供方法を採用しているからだ。集客は主にオンライン広告経由だが、その安さからか、現在の登録会員は3万5,000人を超え、その6割を20代が占めるという話だった。山手線から一都三県、全国1万台へ同社は最初からスタートアップとして創業されたわけではない。2020年のサービス開始から約5年間、佐久間氏はほぼ一人で事業を回していた。元手は創業融資と、14〜15年の会社員時代に蓄えた自己資金だった。「最初はスモールビジネスとして始めていて、スタートアップをやるつもりはありませんでした。ですが実際にやってみるとニーズが強い一方、銀行からの借り入れで伸ばしていくには時間がかかる。それならエクイティでの調達を活用しながら一気に広げたほうが早い、と考えました」(佐久間氏)。昨年6月にはシリーズ A で1億円を調達し、拡大の速度を切り替えた。調達後の半年で車両は3倍以上に増加。いまは先行投資フェーズだが、1台ごとの採算はすでに合っているという話だった。同社が次に狙うのは千葉・埼玉・神奈川を含む一都三県で、対象エリアは4〜5倍に広がる。その先には、フランチャイズを含めた全国展開も見据える。あわせて、運転に不慣れな利用者を支える AI チャットサポートの搭載を予定する。多言語に対応させれば、増え続ける訪日客の利用にも道が開ける。その先にあるのはユーザーデータを活用した他事業領域への拡大だ。利用者のデータを自前で扱えるようになれば、そこに走行中の車の位置情報が加えることで、たとえばコンビニに立ち寄った利用者が施錠のためアプリを開いた瞬間に、その店で使えるクーポンを表示するといったこともできると考えている。佐久間氏は、2030年に全国で1万台の車両の提供を目指す。LCC レンタカーというアイデアで、移動を支える新たなインフラとなれるか。