韓国政府は、約91兆円規模の半導体メガプロジェクトを具体化するため、約5597億円の専用ファンド設立や、許認可期間を短縮する法案の推進を発表した。また、李在明(イ・ジェミョン)大統領は、2028年半ばまでに光州(クァンジュ)空軍基地の機能を移転し、用地をファブ建設に利用できるようにするよう指示した。しかし、同基地は戦時に米軍資産を受け入れる共同運用基地に指定されており、移転には米国との調整が必要になるなど、実現に向けた課題も浮き彫りになっている。■光州空軍基地は米軍の戦時運用にも関係、米国との合意は未成立韓国政府は月曜日(10日)、5760億ドル(約91兆5840億円、1ドル=159円換算)規模の半導体メガプロジェクトを、構想の表明から具体的な実行段階へ移すための施策を発表した。5兆ウォン(35億2000万ドル、約5597億円)の半導体専用ファンド、同額の貿易金融、許認可期間を短縮する法案の推進が柱となる。一方、李在明(イ・ジェミョン)大統領は、2028年半ばまでにファブ建設用地を確保できるよう、光州(クァンジュ)空軍基地の機能を移転するよう指示した。しかし数時間後、これまで公にされていなかった米軍との調整が必要であることが明らかになり、状況は複雑化した。この政策パッケージは、李大統領が主宰し、Samsung ElectronicsとSK Hynixの幹部が出席した第2回官民合同点検会議後の記者会見で、姜勲植(カン・フンシク)大統領秘書室長が発表した。この会議は、李大統領が6月29日に発表した「3大メガプロジェクト」と、Samsungグループによる10年間で1000兆ウォン(約7050億ドル、約112兆950億円)の投資方針、SK Hynixによる1100兆ウォン(約7760億ドル、約123兆3840億円)の拡張計画を具体化する、初の詳細な実務対応となった。ファンド、法案、空軍基地の移転は、このメガプロジェクトが大統領の方針を実際の建設へ結びつけられるかを測る3つの試金石となっている。それぞれが異なる障害に直面している。ファンドには具体的な運用を巡る課題があり、メガ特区法案(Mega Special Zone Act)は国会で労働界の反発に直面している。そして、月曜日に発表された施策の中で最も具体的かつ象徴的な空軍基地の移転には、韓国政府が会見で前面に出さなかった事情がある。月曜日の会見から数時間後、Korea Heraldは、光州空軍基地が米韓連合防衛態勢の下で「共同運用基地(collocated operating base)」に指定されていると報じた。これは、戦時に米軍資産を受け入れることになっている施設である。会議後、匿名を条件に取材に応じた大統領府高官は、移転には「米国との調整が必要になる」と認め、「その重要性はいくら強調してもしすぎることはない」と述べた。李大統領が掲げた2028年半ばという移転目標は、すでに米国との合意が成立していることを意味するのかと問われると、同高官は協議がまだ続いていると答えた。「政府は、連合防衛態勢やその他の懸案となっている同盟上の問題に悪影響を及ぼすことなく、米軍施設の早期移転を進めるため、政府を挙げて米国と積極的に協議する計画だ」と説明した。さらに、「米国はこれまでのところ、こうした協議に前向きな反応を示している」と述べた。前向きな協議は、合意が成立したことを意味しない。米国は移転時期について公に約束しておらず、同高官は軍事機密上の懸念を理由に、現在光州を拠点とする韓国軍の機能をどこへ移すのかについても明らかにしなかった。李大統領は会議で、「国防部には、2028年半ばまでに光州空軍基地の機能を他の軍用飛行場へ一時的に移してもらいたい」と述べ、目標を明確にした。同時に、韓国が目指す建設ペースの基準として、2022年4月の着工から2024年2月の開所式まで約22カ月で進んだTSMCの熊本第1工場を挙げた。光州の候補地は約8.26平方キロメートル(3.19平方マイル)で、国家産業団地の候補地に指定されている。Samsung ElectronicsとSK Hynixによる計4棟のファブが建設されることが期待されている。姜秘書室長は、政府が2028年後半までに軍事施設の移転を完了する計画だと説明した。さらに、企業側の準備が整い次第、少なくとも1棟のファブを着工できるよう、大規模な軍事施設の移転が終わる前に、基地近くの馬勒洞(マルクドン)にある別の36万6000平方メートル(約90エーカー)の弾薬庫用地で整備に着手する方針も示した。この用地では、すでに土地の造成作業が完了している。■2019年の日本の輸出規制が示した供給網の弱点に対応月曜日に発表された5兆ウォン(35億2000万ドル、約5597億円)の半導体ファンドは、Samsung ElectronicsとSK Hynixを意図的に対象としていない点で注目される。対象となるのは、半導体の素材・部品・装置(MPE)企業とファブレス半導体設計企業である。いずれも韓国の大規模ファブを支えるサプライチェーンの上流・中流に位置し、海外からの供給途絶に対して構造的な脆弱性を抱える分野だ。この構造的な脆弱性は、過去の事例でも明らかになっている。2019年7月、日本は二国間の主権を巡る対立を背景に、フッ化ポリイミド、フォトレジスト、フッ化水素という3種類の半導体製造用材料の韓国向け輸出に許可要件を導入した。当時、このうち2種類について、日本企業は韓国の輸入量の90%以上を供給していた。一方、3種類すべてについて、韓国国内の生産能力は国内需要の5%未満だった。税関データを用いた学術研究によると、その後、日本から韓国へのフッ化水素輸出は最大96.8%減少した。日韓関係の改善に伴い、日本は2023年3月に規制を解除したが、この出来事を契機に、韓国では国内の代替供給源を育成する政策が数年にわたって進められた。今回のファンドは、その取り組みを加速することを明確な目的としている。政府は出資型のファンドに加え、輸出を重視するサプライヤー向けに、5兆ウォン(35億2000万ドル、約5597億円)の貿易金融を提供する。韓国の中小半導体企業の国際競争力を高めるとともに、業界全体が特定の海外供給源へ依存する構造を緩和する狙いがある。また、半導体の開発、試験、生産の各段階で、大手半導体メーカーと中小サプライヤーの連携を支援するため、10年間で1兆ウォン(7億500万ドル、約1121億円)規模のサプライヤー協力支援プログラムも別途立ち上げる。このファンドの直接の対象となるのは、韓国国内の素材・部品・装置(MPE)サプライヤーである。8月7日に確定した韓国版IRAの生産控除も、同じ層への支援を目的としている。ただし、この控除は国内販売を基準とする仕組みであり、2027年2月に施行令で対象製品が定められるまで支給されない。これに対し、月曜日に発表されたファンドは、同じ戦略的な供給網の弱点に別の角度から対応する、より即時性のある資金となる。■メガ特区法案が抱える労働問題資金面の施策に加え、月曜日の政策パッケージには、年内のメガ特区法案成立を目指す方針も含まれていた。この法案は、大規模な産業用地で建設許可を取得し、環境審査を終え、インフラを整備するまでに通常数年を要する手続きを短縮することを目的としている。しかし、この法案には、公式会見では触れられなかった明確な政治的障害がある。労働界の反発だ。Korea Heraldが先週報じたところによると、法案は最長4年間の有期雇用契約を認める内容となっている。これは、無期雇用への転換が義務付けられるまでの現行の2年間という上限の2倍に当たる。また、派遣労働者を利用できる職種も拡大する。所得上位3%の研究開発職については、週52時間の労働時間上限を事実上なくす選択的労働時間制を適用する内容も含まれている。最後の条項は、与党・民主党にとって大きな方針転換となる。同党は2026年初頭にも、別の半導体特別法の立法過程で、同様の週52時間労働制の適用除外を阻止していた。韓国の二大労働組合中央組織である韓国労働組合総連盟(韓国労総)と全国民主労働組合総連盟(民主労総)は8月上旬、法案を非難する共同声明を発表した。メガプロジェクト特区での雇用が4年間の有期契約とホワイトカラー労働者の無制限な労働時間を前提とするなら、「未来志向の雇用も良質な雇用も」生まれないと警告した。雇用労働部も、表立ってではないものの、明確に異論を示している。金栄勲(キム・ヨンフン)長官は、半導体企業が現行法で認められている特別延長労働制度を利用していないと指摘し、「SK Hynixの場合は全くない」と述べた。そのうえで、週52時間労働制の適用除外がなくても、半導体企業は「過去最高の業績を上げている」と主張した。こうした省庁間の緊張は、業界が成立を求め、産業通商資源部が推進する一方、雇用労働部が懐疑的な法案であることを示している。この組み合わせでは、国会での交渉が長期化する可能性がある。■具体化した電力・用水のインフラ目標月曜日の会見では、ファブクラスターが実際に成立するかを左右する物理的インフラについて、異例なほど具体的な数値目標が示された。韓国南西部の光州・全羅南道地域に計画されている半導体拠点「湖南クラスター」について、当局は再生処理した排水や近隣のダムからの供給を利用し、2030年までに日量65万トン(約1億7170万米ガロン)の水を確保する計画だ。ソウル南部の龍仁(ヨンイン)クラスターでは、コージェネレーション設備、LNG発電、他地域からの送電を組み合わせ、2041年までに14.7ギガワットの電力を供給する計画である。規模を比較すると、最先端のメモリーファブ1棟には、200~400メガワットの安定した電力と、日量1000万~4000万ガロンの超純水が必要となる。湖南の用水目標は4棟のファブで構成されるクラスターを支えることを想定している。龍仁の電力供給計画は、同地域でより広範に進められる半導体施設とAIデータセンターの建設に対応するものだ。TechTimesの過去の報道によると、韓国のAIデータセンターと半導体産業を合わせた電力需要は約24.7ギガワットに達する。これは、出力1.4ギガワットの原子力発電所28基分に相当する。政府はさらに、国務総理室の下に省庁横断の支援協議会を設置するとともに、大統領府(青瓦台)にメガプロジェクトの専任組織を設け、各省庁の取り組みを調整する。特に光州空軍基地の移転には、通常の枠組みだけでは進みにくい省庁間の調整が必要だという認識を示した形だ。■メガプロジェクトにまだ欠けているもの月曜日の政策パッケージは、6月29日のメガプロジェクト発表時に残されていた複数の空白を埋めるものとなった。具体的な金融手段として5兆ウォンのファンドと貿易金融が示され、立法手段としてメガ特区法案が打ち出された。期限を伴う具体的なインフラ目標や、最初の土地開発施策となる光州の弾薬庫用地の整備も盛り込まれた。しかし、まだ欠けているものもある。一つは、建設開始日だ。SamsungもSK Hynixも、湖南地域のいずれのファブについても、具体的な着工日を公表していない。企業が実際に着工するまで、5760億ドル(約4060億ドル相当との原文記載)の投資計画は、建設が進行するプロジェクトではなく、ロードマップにとどまる。もう一つは、SK Hynixによる湖南地域の用地選定だ。Samsungは、韓国南西部に建設する新たなファブの最有力候補地として光州を挙げている。SK Hynixは同地域に生産拠点を設ける意向を確認しているが、具体的な場所は選定していない。SK Hynixの取締役会は8月7日、清州(チョンジュ)のNANDフラッシュ専用施設と龍仁の第2ファブに54兆3000億ウォン(約380億ドル、約6兆420億円)を投じることを決議した。いずれも同社がすでに管理している用地へ