今秋の発表が見込まれる「iPhone 18 Pro」では、メモリ部品のコストがプロセッサを上回り、製造コストの3割超を占める見通しであることが、TrendForceのサプライチェーン分析で示された。AI向けメモリ需要の急増による構造的な価格高騰が背景にあり、サプライチェーンからのリーク情報によれば、大容量モデルでは比較的低速なストレージが採用される可能性もある。9月の正式発表を前に、購入者は端末価格の上昇だけでなく、ストレージ容量による性能差も考慮する必要がありそうだ。■メモリがプロセッサを抜き最大のコスト要因にiPhoneの歴史上初めて、メモリチップのコストがプロセッサを上回った。TrendForceが2026年8月10日に公表したサプライチェーン分析によると、2026年第3四半期には、256GB版iPhone 18 Proの総BOM(部品表)に占めるメモリの割合が約34%に達したという。これは、かつて最も高価な部品の座を争っていたA20 ProアプリケーションプロセッサやOLEDディスプレイパネルを上回る。現在ではメモリが単独で最大のコスト項目となっており、その影響は、今年9月にiPhone購入者が直面するストレージ容量の選択にも直接及ぶ。TrendForceの推計によれば、256GB版iPhone 18 Proの総BOMは、同等のiPhone 17 Proモデルと比べて約38%上昇しており、そのほぼすべてがメモリ価格の急騰によるものだという。この割合はさらに上昇すると予測されている。TrendForceのデータを検討したMacRumorsによると、供給不足を緩和できる新たな製造能力の稼働が数年先になるため、2027年上半期にはフラッグシップiPhoneのBOMに占めるメモリの割合が40%を超えるとTrendForceは予想している。iPhoneの歴史の大部分において、Appleが設計したカスタムシリコンであるAシリーズチップは、Proモデルの製造コストを左右する主要部品だった。アプリケーションプロセッサとOLEDディスプレイが、製品世代によって最大のコスト項目の座を入れ替えてきた。メモリは二次的なコストにとどまり、2025年の256GB版iPhone 17 ProのBOMでは約10%を占めるにすぎなかった。しかし、その順位は現在逆転している。MacRumorsによると、メモリの構成比が拡大する一方、パネルとプロセッサのコストは総BOMに占める割合がそれぞれ1桁台まで低下した。これは単なる価格上昇ではなく、スマートフォンのコスト構造そのものが変わることを意味する。メモリが最大のコスト要因になれば、Appleがどのストレージ容量に戦略的な価格を設定するのか、どこまでコストを吸収し、どこから販売価格に転嫁するのかも変わってくる。さらに重要なのは、今秋、購入者が大容量モデルに100ドル(約1万5900円、1ドル=159円換算)や200ドル(約3万1800円)を追加で支払ったとき、実際にどのような性能を得られるのかという点だ。■メモリ価格高騰の技術的背景根本的な原因は、同じ製造基盤を使用する2種類のメモリの需要が競合していることにある。フラッグシップスマートフォンの回路基板に直接はんだ付けされる低消費電力DRAM「LPDDR5X」は、NvidiaのAIアクセラレータに使われる高帯域幅メモリ(HBM)と同じ基本的なDRAM技術で製造される。HBMを製造するには、12~16個のDRAMダイを垂直に積み重ね、数千本の微細な銅製接続部でつなぎ、完成した積層体をAIチップのシリコンインターポーザ上に接合する必要がある。この工程では、同等量のHBMを生産するために、従来型DRAMの3~4倍に相当するウェハー生産能力を使用する。また、HBMは消費者向けLPDDR5Xと比べ、ウェハー当たり3~5倍の収益を生み出す。世界のDRAM生産の90%超を合わせて占めるSamsung、SK Hynix、Micronの3社は、経済合理性から製造能力をHBMに振り向けている。その結果、LPDDR5Xの供給が逼迫しており、これは一時的な需給変動ではなく構造的な問題とされる。TrendForceのシニアバイスプレジデントであるAvril Wu氏は今年初め、世界的な供給不足を実質的に緩和する新たな生産能力が稼働するのは、早くても2028年になると警告した。IDCのシニアリサーチディレクターであるNabila Popal氏は、この状況を、関税やパンデミックによる供給混乱を合わせても上回る構造的な変化であり、一時的な異常ではなく市場のリセットだと説明している。部品コストへの影響は歴史的に見ても深刻だ。TrendForceがモデル化したものと同じサプライチェーンを分析したTechInsightsは、iPhone 18 Proに搭載される12GBのDRAMパッケージが、1台当たり約145ドル(約2万3055円)に達すると推定している。iPhone 17 Proに搭載された同等のメモリは約39ドル(約6201円)であり、同じ種類、同じ容量のチップとして272%の増加となる。TrendForceによれば、メモリ価格全体は2025年初頭から5~7倍に上昇しているという。単一の部品カテゴリーでこれほどのコスト上昇が起きることは、現代の家電業界ではほとんど前例がない。■ストレージ選びへの影響:大容量モデルは低速化の可能性今秋にストレージ容量を選ぶ購入者にとって、これまでのメモリ危機に関する報道では十分に取り上げられてこなかった問題がある。サプライチェーン情報を発信するReptalica氏によれば、iPhone 18 ProおよびPro Maxの1TBモデルと2TBモデルは、256GBモデルと512GBモデルに搭載されるTLC NANDではなく、QLC NANDフラッシュストレージを使用すると予想されている。この部品レベルの情報は、AppleInsiderが2026年7月に掲載したレポートとWCCFTechの分析でも裏付けられたとされる。この技術的な違いは重要だ。TLC(Triple-Level Cell)NANDは、1つのセルに3ビットのデータを保存し、より高速で安定したランダム読み書き性能を提供する。一方、QLC(Quad-Level Cell)NANDは1つのセルに4ビットを保存するため、より低いコストでウェハー当たりの記憶容量を増やせるが、ランダムアクセス性能、特にランダム読み取り速度では不利になる。AppleInsiderのストレージ部品レポートでも裏付けられたとされるリーク情報によれば、1TB版iPhone 18 ProではSK Hynixの「BC8Q-1T」が主要な供給品になるという。サプライチェーン分析では、これはエンタープライズ用途を指向した設計であり、ランダム4K性能がTLC製品よりも大きく劣ると説明されている。QLCへの変更が報告される一方で、大容量モデルの価格差は大きく広がる可能性がある。MacRumorsが紹介したTechInsightsの推計によると、256GB構成のNANDフラッシュコストは、1台当たり約13ドル(約2067円)から約51ドル(約8109円)へ、4倍近くに上昇する見通しだ。1TB構成ではさらに高く、Counterpoint Researchは、1TB版iPhone 18 Pro MaxのNANDフラッシュだけで250ドル(約3万9750円)を超える可能性があると推定している。これは、iPhone 17 Pro Maxの総BOMのおよそ半分に相当する金額だという。端的に言えば、1TBまたは2TBのiPhone 18 Proに200ドル(約3万1800円)や400ドル(約6万3600円)を追加で支払う購入者が、大幅に高い製造コストのストレージを搭載しながら、より低速な製品を手にする可能性がある。より高速なTLC NANDを採用すると予想される256GBモデルと512GBモデルは、表示価格が安いだけでなく、支払額に対するストレージ性能の面でも優れた選択肢になり得る。この関係は従来とは異なる。これまでの製品世代では、1TBモデルが高価なのは主にAppleが大容量ストレージに高い価格差を設定していたためだった。今回は、メモリ製造をめぐる経済構造の変化により、1TBモデルは価格が高い一方で、ストレージ性能が低くなる可能性がある。AppleがマーケティングでNANDの種類を明示する可能性は低いとみられる。仕様表に記載されるのは通常、ストレージ容量だけである。この違いは、購入時には多くの消費者から見えにくいものとなる。■Appleの対応策:コスト吸収と分散TrendForceは、Appleが6月にMac、iPad、HomePodの価格を引き上げた際と同様の戦略を採ると予想している。つまり、コスト増のすべてを購入者に転嫁するのではなく、粗利益率の低下を受け入れて一部を吸収するというものだ。その背景には市場シェアの維持がある。Appleは6月にMacとiPadの価格を最大300ドル(約4万7700円)引き上げた際、iPhoneの価格を据え置いた。これは、同社がiPhoneの価格感応度を他の製品ライン以上に重く見ていることを示すものだ。ティム・クック氏は、7月に後継者へCEO職を引き継ぐ前に出席した最後の決算説明会で、Appleがメモリ価格の上昇圧力を受けていることを認めた。同氏はアナリストに対し、第4四半期のメモリコストは第3四半期よりさらに高くなるとの見通しを示し、Appleが不本意ながら価格を引き上げたことも認めた。以前にはウォール・ストリート・ジャーナルに対し、このメモリをめぐる状況は、40年以上に及ぶ業界経験でも見たことがないものだと説明していた。Appleが採り得るもう一つの手段は、現行ラインナップに残る旧型iPhoneの価格を引き上げることだ。メモリコストの負担を製品ポートフォリオ全体に分散し、値上げ分がiPhone 18 Proの発売価格に集中するのを避ける狙いがある。iPhone 18の発売後に、値下げされたiPhone 17 Proを購入しようと考えていた人にとっては、両モデルの価格差が従来の製品世代ほど広がらない可能性がある。Appleがコスト削減策として第4のDRAMサプライヤーを導入しようとした試みは頓挫した。同社は、中国で販売する端末への採用を検討するため、中国のメモリメーカーChangXin Memory Technologies(CXMT)のチップを数カ月にわたって試験し、より広範な承認を求めてホワイトハウスへの働きかけも行っていた。8月5日、CXMTはAppleへの値引きを提示せず、SamsungやSK Hynixと同等か、それ以上の価格を示したという。これは、CXMTがビット当たりの製造コストで競争するために必要な極端紫外線(EUV)露光装置を入手できないようにする輸出規制の直接的な結果とされる。超党派の上院議員7人はAppleに対し、世界で販売するすべてのApple製品からCXMT製チップを除外すると書面で約束するよう求め、8月21日を期限に設定した。この期限とサプライヤー導入の失敗により、iPhone 18の発売前に第4の供給元から価格面の恩恵を得ることはできない見通しとなった。■Androidメーカーへのより深刻な打撃スマートフォン業界でも特に高い利益率を持つAppleが、この変化によって実質的な財務圧力を受けているのであれば、5~10%の利益率で事業を展開するAndroidメーカーの状況はさらに深刻だ。TrendForceは、エントリーおよびミッドレンジ市場のブランドには、同じコスト上昇を吸収する余地がはるかに少ないと指摘している。AndroidメーカーはApple以上の値上げを行うか、粗利益率がマイナスになった製品ラインを廃止すると予想されている。低価格帯では、値上げだけにとどまらない複合的な問題が起