SpaceXの投資家が6月から注視してきた、インサイダー保有株の最初のロックアップ(売却制限)解除が、米国時間8月6日(木)に実施された。最大9億1150万株が売却可能となったが、同社株は巨額の設備投資(Capex)への懸念から、すでに数週間ぶりの安値圏にある。従業員や初期投資家にとっては保有資産を現金化する初めての本格的な機会となる一方、市場は今後11カ月以上にわたる段階的な株式供給を消化していくことになる。■巨額の設備投資がもたらした株価急落SpaceXの投資家が6月から注視してきた時が到来した。同社初のインサイダー保有株のロックアップ解除が8月6日(木)に発効し、最大9億1150万株が売却可能となった。8月5日(水)の終値で換算すると、その価値は約1010億ドル(約15兆9580億円、1ドル=158円換算)に上る。しかし解除当日の朝、株価はすでに数週間ぶりの安値圏で取引されていた。2025年12月から保有資産を現金化する機会を待っていた従業員や初期投資家にとって、今回の解除は、市場がすでに大きな打撃を受けた直後に訪れたことになる。同社初の公開決算説明会で、四半期の設備投資がアナリスト予想を大幅に上回る184億ドル(約2兆9072億円)に達したことが投資家を動揺させ、SPCX株は8月5日に、前日の125.33ドルから108.27ドルへ下落して取引を終えた。SpaceX初の大規模なロックアップ解除は、株価が6月のピークを50%以上下回るなかで迎えられた。1日で13%下落した直後だけに、ロックアップ解除は「解放」というより、新たな懸念材料となっている。インサイダー保有株が売却可能になった時点で、SPCX株は、わずか7週間前の6月16日に付けた日中の過去最高値225.64ドルを約52%下回り、135ドルのIPO価格からも20%以上安い水準にあった。株価データからも、IPO後のピークからの反落の大きさが確認できる。一般的な基準で見れば、SpaceXの2026年第2四半期(Q2)決算は好調だった。売上高は前年同期比92%増の78億1000万ドル(約1兆2340億円)に達し、アナリストのコンセンサス予想である69億3000万ドルを上回った。調整後EBITDAも35億ドル(約5530億円)と、予想の20億ドルを75%上回った。3つの事業部門はいずれも個別の予想を上回った。それでも市場の関心は設備投資に集中した。Q2の設備投資額は184億ドルと、Q1の101億ドルから約82%増加し、その後に13%の株価下落が続いた。木曜日の朝に最初のロックアップが解除される前に、株価はすでに、一部のアナリストがより重大な打撃とみなした決算説明会の影響を受けていた。Starlinkを中核とし、現在164カ国で1200万人の加入者にサービスを提供するコネクティビティ部門は、42億9000万ドルの売上高と16億6000万ドルの営業利益を計上した。AIインフラストラクチャ部門の売上高は25億6000万ドル、営業損失は12億6000万ドルで、損失額はアナリスト予想より11億3000万ドル少なかった。宇宙部門の売上高は9億6200万ドルと、予想の8億3500万ドルを上回った。それでも、設備投資への懸念を打ち消すには至らなかった。Q2の設備投資総額は184億ドルに達し、アナリストの平均予想である132億ドルを大幅に上回り、Q1の101億ドルから約82%増加した。SpaceXがデータセンター容量を1.0ギガワットから1.4ギガワットへ拡大したことなどを背景に、AI部門だけで158億3000万ドルを占め、Q1の77億ドルから倍増した。経営陣は、Q3とQ4の設備投資もそれぞれ同程度の水準になる可能性があると示唆した。アナリストは現在、通年の設備投資額が約450億ドル(約7兆1100億円)以上に達する可能性があると予測している。Piper Sandlerは、2027年度の設備投資が約650億ドルに近づき、従来予想を約170億ドル上回る可能性があると独自に予測した。SpaceXのCFOであるBret Johnsen氏は、決算説明会でこの支出の意味を説明し直そうとした。「すべての設備投資が同じというわけではありません」とJohnsen氏は述べた。「AIコンピューティングについては、1年未満で投資を回収できる形で資本を投下できています」。CEOのElon Musk氏は長期目標として、2026年末までに年間売上高換算で1000億ドルの水準を達成することを掲げた。また、売上高1兆ドルの達成予測を従来より1年早い2030年に前倒しし、2029年に達成する可能性も「ゼロではない」と述べた。CNNの決算報道でも、Johnsen氏の説明とMusk氏の目標が伝えられている。単一四半期として企業が報告した過去最大の設備投資額と、野心的ではあるものの未検証の将来目標を受け、SPCX株は水曜日の取引で13%以上下落した。GraniteSharesのCEOであるWill Rhind氏は、下落について「決算そのものよりも、今後数日間に起きることへの反応かもしれない」と述べた。■段階的なロックアップ解除の仕組み木曜日のロックアップ解除は、株式供給をめぐる問題の終わりではなく、2027年6月まで続く過程の始まりにすぎない。SpaceXと引受銀行は、インサイダー保有株のすべてが1日で取引可能となり、市場に大量の株式が流入する、一般的なIPOの一斉解除を避けるため、9段階のロックアップ解除を設計した。その結果、売却可能株式の増加を今後11カ月以上に分散させる仕組みとなっている。木曜日の第1トランシェは、インサイダー保有株全体の最大20%に相当する約9億1150万株を対象とし、SpaceXが8月4日に初の四半期決算を発表してから2営業日後に売却可能となった。Barron'sの分析によると、制限解除後の取引可能株式数は約6億3900万株から最大15億5000万株に増える。発行済株式総数に占める浮動株の割合も、1日で約4.9%から11.8%へ上昇し、2倍以上になる。ロックアップ解除の条件は、SpaceXが8月4日の決算発表日を確定した時点で設定された。株価の推移を条件とする別のトランシェとして、追加の4億5580万株が引き続きロックアップされている。このトランシェが早期解除される条件は、SPCX株が直前の10営業日のうち5営業日以上で、135ドルのIPO価格を30%以上上回る175.50ドル以上で取引されることだった。株価が135ドルを大きく下回っていたため、この条件は満たされず、追加分は当面ロックアップされたままとなる。木曜日以降の予定は、解除当日の動きと同じくらい重要だ。8月12日には約3億1900万株の追加解除が予定され、その後は10月まで、インサイダー保有株の約7%に相当するトランシェが隔週で解除される。さらに大きい、インサイダー保有株全体の約28%に相当する約13億株のトランシェは、10月下旬または11月と予想されるSpaceXのQ3決算発表に連動している。標準的な180日間のロックアップは、最終的に2026年12月8日に満了する。CEOのElon Musk氏が個人で保有する約64億株は、他を大きく上回る最大の保有枠であり、別途366日間のロックアップ契約が適用されている。この契約は2027年6月12日まで満了しないため、Musk氏はそれ以前のロックアップ解除に合わせて株式を売ることはできない。段階的な解除スケジュール全体は、最初のトランシェから11カ月以上に及ぶ。水曜日にSpaceXの目標株価を156ドルから140ドルへ引き下げる一方、「中立」の投資判断を維持したPiper Sandlerは、この段階的な解除スケジュールを短期的な企業価値評価の主要な制約要因と位置づけた。同社は、Musk氏のロックアップが2027年6月に満了するまで、取引可能な浮動株が発行済株式総数の約50%に達しないことから、ロックアップ解除による潜在的な売り圧力が企業価値評価の逆風となり、今後1年近くにわたってファンダメンタルズに対する株価評価倍率を抑える可能性があると警告した。■アナリストの見方と空売りの動向木曜日のロックアップ解除が実際に大規模な売りを引き起こすのか、それとも反応が限定的なものにとどまるのかについて、ウォール街のアナリストの見方は大きく分かれている。この見解の相違自体が、市場の不確実性を示している。MorningstarのアナリストであるNicolas Owens氏は、売却可能となったインサイダーの取得価格が低く、保有期間も長いことから、6月のピークを大きく下回る株価でも利益を確定する強い動機があるとして、大規模な売りを予想している。ただしOwens氏は、予想される影響の多くがすでに株価に織り込まれている可能性も認めている。ピークから50%以上下落したことは、市場が数週間前から株式供給の増加を織り込んできたことを示しているという。Forbesに掲載されたOwens氏の分析は、今回の解除を、予想されていた売りと実際の売りとの差を見極める機会と位置づけている。JPMorganのDoug Anmuth氏は調査ノートで、木曜日の解除を見越した投資家の大規模なポジション調整がすでに進んでおり、この事前調整が実際の売り圧力を弱める可能性があると主張した。Anmuth氏は、140%を超える浮動株の拡大について、予想外の出来事ではなく、市場がすでに消化し始めている要因だとみている。Morgan StanleyのAdam Jonas氏は、ロックアップ解除を前に「オーバーウェイト」の投資判断と300ドルの目標株価を維持した。同氏は、SpaceXが打ち上げ、コネクティビティ、AIの各分野にまたがる独自の立場にあると説明した。SPCX株が100ドルまで下落した場合、AI事業の価値をほとんど、あるいはまったく織り込まず、打ち上げ事業とコネクティビティ事業も過小評価する水準になるとして、強気シナリオでは企業価値評価上の下限に当たると主張した。Bank of AmericaのRon Epstein氏は、ロックアップ解除について、SpaceXの事業基盤に対する評価というより、主として短期的な需給面の重荷とみている。市場が株式供給を消化するまでには数営業日を要する可能性があるものの、ファンダメンタルズへの見方が長期的に変化するとは限らないとした。Forbesに掲載されたEpstein氏の見解も、今回の解除をファンダメンタルズの再評価ではなく、株式需給の問題として位置づけている。Piper Sandlerの調査ノートは、ほかではあまり取り上げられていない懸念も示した。SpaceXが結んでいるAIクラウド契約のうち、Anthropicとの月額12億5000万ドルの契約と、10月に始まるGoogleとの月額9億2000万ドルの契約は解約可能であり、契約金額から想定されるほど長期的な収益貢献を確実には見込みにくいという。同社はこれを、ロックアップ解除の仕組みとは別の企業価値評価上のリスクとして挙げた。重要なのは、売却可能になった保有者が木曜日に株式を売る義務はないという点だ。売却は数日間に分けて行われる場合もあれば、ブロック取引を利用する場合、税務上の理由から延期する場合、株価が回復するまで待つ場合もある。売却可能になることと、実際に売却することは別の判断である。木曜日にSPCX株にかかる供給圧力は、新たに売却可能となった9億1150万株だけではない。Bloombergが引用したS3 Partnersのデータによると、現在、取引可能な浮動株の推定35%が空売りされている。これは過去数週間にわたって積み上がった弱気のポジションだ。この空売り残高は、結果が大きく二方向に分かれ得る状況を生み出す。インサイダーによる売却が予想以上に多く、株価が大幅に下落すれば、空売り投資家は利益を得て、ポジションを維持または拡大する可能性がある。一方、保有者がより