AIを支える機器を製造する現場で、ロボットの導入が加速している。米テラダイン・ロボティクス(Teradyne Robotics)は、AIデータセンターを建設する電子機器メーカーや半導体施設からの需要に支えられ、2026年第2四半期に過去最高となる1億ドル(約158億円、1ドル=158円換算)の売上を記録した。受注は前四半期比で50%増加し、同部門は5四半期連続の成長となった。これは、2025年に世界の従業員を約4分の1削減した事業にとって大きな節目であり、AIインフラ投資が産業用ロボットの購入主体と用途を変えつつあることを示す、これまでで最も明確な証拠でもある。この変化は、Teradyneの業績だけにとどまらない。同社の歴史上初めて、電子機器製造と半導体が、自動車および一般製造業を上回り、四半期ベースでTeradyne Robotics最大の最終市場となった。AIデータセンター内で回路基板を組み立て、光ファイバーを配線し、バーンイン試験を行う協働ロボットは、長年にわたって自動車工場で使われてきたものと同種である。しかし、その需要を生み出す原動力は根本的に変わった。■33%の売上増を牽引したもの協働ロボットメーカーのUniversal Robots(UR)と、自律走行搬送ロボットを手がけるMobile Industrial Robots(MiR)を傘下に持つTeradyne Roboticsは、2026年第2四半期の売上が1億ドル(約158億円)になったと発表した。前年同期の7500万ドル(約118億5000万円)から33%増、2026年第1四半期の9100万ドル(約143億7800万円)から9%増となる。親会社のTeradyne Inc.は、同四半期の総売上高が前年同期比104%増の13億2900万ドル(約2099億8200万円)になったと発表した。半導体テスト部門の売上高は、2四半期連続で10億ドル(約1580億円)を上回った。CEOのGreg Smithは決算説明会の冒頭で、「2四半期連続で過去最高の売上高を達成した。今回も、その牽引役はAIだった」と明言した。Smithによると、半導体テスト、製品テスト、ロボティクスという3つの事業部門すべてで、AI関連の売上が60%以上を占めたという。ロボティクス部門で同四半期に最も急成長した分野は、電子機器製造と半導体だった。いずれもAIデータセンター建設による需要の拡大が成長を支えた。この2分野の売上は2026年第1四半期から50%増加し、初めてロボティクス部門最大の最終市場となった。Smithは、AIインフラ分野には「組み立て、自動化、テスト、バーンイン装置を対象とする数十億ドル規模の市場」が生まれると予測し、2030年ごろまで10%台半ばの成長率が続くとの見通しを示した。■なぜAIファクトリーにコボットが必要なのかAIデータセンターの建設と協働ロボットの需要が結びつく理由は、直感的には分かりにくい。この関係を理解するには、売上高の数字だけでなく、製造現場で実際に何が起きているかを見る必要がある。AIを動かすハードウェアを作るには、GPU、広帯域メモリ(HBM)モジュール、カスタムネットワークスイッチ、光インターコネクトなど、複雑さを増す電子機器を組み立てなければならない。しかも、その構成はGPUの世代が変わるたびに変化する。こうした作業には、ほかの多くの自動化手段を適用しにくくする4つの特徴がある。第1に、部品配置が頻繁に変わる多品種少量生産であること。第2に、精密な力制御が必要であることだ。コネクタを強すぎるトルクで挿入すると、外見からは分からない故障が発生する可能性がある。第3に、部品が正しく配置されたことをカメラで確認しなければならない。そして第4に、製品や作業の種類が多いため、従来型の産業用ロボットが必要とする専用治具や安全柵への投資を正当化しにくい。協働ロボットは、この4つすべてに対応できる。関節部の力を制限する機構によって過大なトルクを防ぎ、統合可能な画像認識システムによって部品の配置を確認する。短時間で再プログラムできるため、数週間に及ぶエンジニアリング作業を行わなくても、新しいGPU世代に合わせて製造設備を変更できる。また、人と協働することを前提とした安全設計により、床面積のコストが高い環境でも技術者と作業スペースを共有できる。Teradyneが自社の事業を「ウェハーからAIデータセンターまで」という戦略で表現しているのは、この特徴を端的に示している。同社はウェハー工程向けのテスト装置と、組み立て工程向けの協働ロボットを提供し、半導体チップからデータセンターまでのバリューチェーンをカバーしている。幅広い市場データも、Teradyneの状況と一致している。Association for Advancing Automation(A3)によると、北米における協働ロボットの受注は2026年第1四半期に55.6%増加した。半導体・電子機器分野では、販売台数が前年同期比31.7%増、売上高が79.2%増となった。売上高の伸びが台数の伸びを大きく上回ったことは、購入企業が、より高価格で専門性の高いシステムを選んでいることを示している。■技術面での賭け:AI学習ハードウェアとしてのコボットTeradyneのロボティクス分野への投資は、データセンター向け機器メーカーに精密な組み立て能力を提供することだけにとどまらない。Universal RobotsとScale AIは2026年3月、NVIDIAのGTC 2026で「UR AI Trainer」を発表した。このシステムは、協働ロボットを製造作業の実行装置としてだけでなく、AIの学習データを生成するハードウェアとして位置づけるものだ。仕組みは次のようになっている。オペレーターがURの協働ロボットを直接動かし、スマートフォンの梱包やコネクタの挿入といった繊細な操作を教示する。その間、UR AI Trainerは、動作、力・トルク、映像の各データを高精度で同期して記録する。このデータセットは、Vision-Language-Action(VLA)モデルの学習に使用される。VLAモデルとは、視覚による状況認識、自然言語による指示の理解、ロボットの動作指令生成を、単一の処理系で統合するニューラルネットワークである。学習済みのVLAモデルは、データを収集したものと同じ工場内のURロボットに直接導入できる。これにより、Universal RobotsでAI Robotics Products担当VPを務めるAnders Beckが「研究室から工場までのギャップ」と呼ぶ問題を埋められる。BeckはGTC 2026での発表時に、「大企業からAI研究機関まで、当社の顧客は、もはやAI機能だけを求めているのではない」と述べた。「顧客が必要としているのは、実際に導入する予定のロボットを使ってAIモデルを学習させるために、高精度で同期されたロボットデータと映像データを収集する方法だ」ここには構造的な意味がある。協働ロボットは、もはや製造作業を実行する装置だけではなく、AIモデルを学習させるためのハードウェアでもある。物理的な操作を行うAIモデルを開発する組織には、力の情報を含む高品質な実演データを生成できるロボットが必要になる。力・トルクセンサーと高精度なデータ収集能力を備えたTeradyneのURプラットフォームは、こうした需要に対応できる位置にある。協働ロボットの売上は現在、工場の建設サイクルだけでなく、AIの研究開発投資にも連動するようになっている。Teradyneは、2026年6月にシカゴで開催されたAutomate 2026で、さらに踏み込んだ展示を行った。同社が「概念段階ではなく、実際に導入可能」と説明するフィジカルAIのアプリケーションを披露したのである。展示には、Generalist AIのGEN-1モデルによって自律動作する2台のUR12eロボットが含まれていた。このロボットは、作業ごとの専用プログラミングを使わず、複雑で器用さを必要とする操作を実演した。Teradyne Robotics GroupのプレジデントであるJean-Pierre Hathoutは、Automateで次のように述べた。「われわれが紹介しているデモは実物であり、実際に導入できる。メーカーは、本日展示しているフィジカルAI対応アプリケーションを購入できる」同社はAutomate 2026で「MiR1200 Pallet Jack」も発表した。Teradyneが同社初のフィジカルAI製品と説明する自律走行搬送ロボットである。施設内の環境を事前にすべて地図化する方式ではなく、端末上でAI推論を実行し、変化が多く構造化されていない環境でも動作できるよう設計されている。■形成されつつある米国市場AIインフラ需要の拡大と並行して、Teradyneの業績には、製造業の国内回帰を示す動きも表れている。2026年第2四半期には、米国での売上がTeradyne Roboticsの総売上高の32%を占め、直近数四半期の水準から上昇した。これは、米国の製造業政策や国内投資をめぐる幅広い傾向を反映している。米国内の需要に現地から直接対応するため、Teradyne Roboticsは、ミシガン州ウィクソムにある6万7000平方フィート(約6225平方メートル)の施設を改装している。ウィクソムはデトロイトの北西約30マイル(約48キロメートル)に位置し、この施設は新たな米国オペレーションハブとなる。同施設ではUniversal Robotsの協働ロボットを製造する。将来的には、MiRの自律走行搬送ロボットの生産を追加する可能性もある。また、顧客向けの地域トレーニングセンターおよびサービス拠点としても機能する。同社は今後数年間で、この拠点に数百人規模の雇用を創出すると見込んでいる。ウィクソムは、米国の自動車産業と先端製造業が集積する地域の中心に位置する。Hathoutは、この拠点の目的の一つとして、社名が公表されていない大手電子商取引企業への対応を挙げている。この顧客はAmazonだと広くみられており、Amazonの倉庫ロボット「Vulcan」にはURの協働ロボットアームが組み込まれている。CFOのMichelle Turnerは2026年第2四半期の決算説明会で、同年後半も成長が続くとの見通しを示した。Smithは、ウェハー製造装置への投資が、2027年以降のロボティクス事業の持続的成長を支える需要基盤になると説明した。Teradyneは、世界のウェハー製造装置投資が2030年ごろまでに2500億ドル(約39兆5000億円)に近づくと予測している。■背景:2度の人員削減からの回復今回の記録的な四半期業績は、Teradyne Roboticsの歴史上、最も厳しい時期の一つを経た後に実現した。同部門の年間売上高は、パンデミック期の自動化投資に支えられて2022年に3億2600万ドル(約515億800万円)でピークに達した。その後は、2023年に3億400万ドル(約480億3200万円)、2024年に2億9300万ドル(約462億9400万円)と減少が続いた。業績の低迷を受け、2025年には2度の人員削減が行われた。1月には、世界のロボティクス部門の従業員の約10%に当たる約140人を削減した。11月には、残った従業員の約14%を対象とする2度目の削減を実施した。2回を合わせると、同部門の人員は約4分の1減少した。当時、同社はこの措置について、「事業を強化し、最大の価値を提供できる分野に確実に集中するための先行的な対応」と説明していた。再編では、それまで別々に運営されていたUniversal RobotsとMiRの営業、マーケティング、顧客サービス組織を、一つの統合チームにまとめた。Teradyneによると、これによりロボティクス部門の損益分岐点となる売上高は、2024年の4