Ray-Ban Meta AIグラスの第2四半期(Q2)の収益がほぼ倍増し、製品カテゴリーがアーリーアダプター層の関心の対象からマス市場の需要へと移行したことを示している。製造元のエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)は、需要増に対応するため生産規模の拡大を急ぐとともに、次世代ARグラスの鍵となるウェーブガイド(導波路)の製造能力構築に向けた戦略的提携を進めている。■好調な2026年上半期業績Ray-Ban Meta AIグラスは、普通のサングラスのように見えながら、質問に音声で答え、指示に応じて写真を撮影できる。さらに、799ドル(約13万1000円、1ドル=164円換算)のディスプレイモデルでは、レンズに直接情報を投影する。その収益が2026年第2四半期にほぼ倍増した。これは丸め誤差でも、小規模な母数による効果でもない。製品カテゴリーがアーリーアダプターの好奇心の対象からマス市場の需要へと移行した結果である。Meta Platformsと提携してRay-BanおよびOakleyブランドの製品を製造する仏伊のアイウェア大手エシロールルックスオティカは、火曜日(2026年7月28日)、2026年上半期の収益が前年同期比9.7%増(恒常為替レートベース)の148億ユーロ(約168億ドル、約2兆7552億円)に達したと発表した。第2四半期の成長率は8.7%だった。調整後営業利益は恒常為替レートベースで15%増加し、調整後営業利益率は80ベーシスポイント上昇して18.9%となった。上半期のフリーキャッシュフローは10億7000万ユーロ(約12億1000万ドル、約1984億円)に達し、過去5年間で最高の上半期実績となった。前年同期も1億ユーロ(約1億1400万ドル、約187億円)以上上回った。AIグラスがこの成長を牽引している。エシロールルックスオティカは2025年通期に、Ray-BanおよびOakley Metaグラスを700万本以上販売した。これは2023年と2024年を合わせた販売本数約200万本の3倍以上である。この加速は2026年に入っても続いており、AIグラス部門の第2四半期の収益は前年同期比でほぼ倍増した。■生産規模拡大を急ぐAIグラス、Q2収益はほぼ倍増Ray-Ban Metaシリーズは現在、カメラとスピーカーのみを搭載した379ドル(約6万2000円)の第2世代モデルから、カラーのインレンズ・ヘッドアップディスプレイと専用リストバンドによるジェスチャー操作に対応する799ドルの最上位モデル「Meta Ray-Ban Display」まで、幅広い価格帯で展開されている。ディスプレイモデルは発売以来、供給制約が続いている。需要が在庫を上回るなか、Metaとエシロールルックスオティカは生産発注量の引き上げに取り組んできた。Q2業績発表の時点では、より広範な海外市場への展開も進められていた。Oakley Metaモデルは、ライフスタイル志向のRay-Banを起点とする製品ラインを、競技・スポーツ分野にも広げている。小売分析企業Circanaによると、スマートグラス市場の収益は2026年5月までの12か月間で233%増加し、4億3600万ドル(約715億円)に達した。Metaとエシロールルックスオティカの製品がこのカテゴリーを主導している。IDCの2026年第1四半期のトラッカーデータによれば、Metaの市場シェアは69.2%に達している。最も有力な新規参入製品であるSamsung Galaxy Glassesは7月22日のGalaxy Unpackedで登場しており、今秋、この優位を切り崩そうとすることになる。Metaとエシロールルックスオティカは、年間生産能力を2000万台規模へ拡大するための協議を行っている。実現すれば、2025年の出荷台数の約3倍に相当する。この規模を現実のものにできるかどうかは、ARグラスおよびディスプレイ搭載グラスのカテゴリー全体を長年制約してきた技術的課題の解決にかかっている。■ウェーブガイドとは何か、なぜ製造能力の構築に取り組むのか799ドルのMeta Ray-Ban Displayが機能するのは、「ウェーブガイド(導波路)」と呼ばれる部品があるためだ。これは、極小のLCoS(シリコン上液晶)マイクロディスプレイが生成した光を取り込んでレンズ内へ導き、精密に配置された一連の部分反射ミラーを介して伝播させ、着用者の視野に直接出射する精密ガラス基板である。同時に、着用者がレンズ越しに現実世界を見られるだけの透明性も維持する。iFixitによるRay-Ban Displayの分解分析でも、この構造が詳細に確認されている。現在のMeta Ray-Ban Displayのウェーブガイドは、イスラエルの光学企業Lumusが設計し、ドイツの特殊ガラスメーカーSCHOTTが幾何学的反射型ウェーブガイド技術を用いて製造している。幾何学的ウェーブガイドは、消費者向けスマートグラスで有力視されている構造である。競合する回折型ウェーブガイドよりも大幅に明るく、CES 2026でLumusが公表したデータによれば、輝度効率は最大10倍に達する。屋外でも利用でき、回折型で問題となる色のゆがみである「レインボー効果」も生じない。現在のRay-Ban Displayは20度の視野角を提供する。Lumusの次世代モデル「Z-30」は、重量を30%軽く、厚さを40%薄くしながら、視野角を30度に拡大する。さらに、開発中の「ZOE」ウェーブガイドは70度を超える視野角を目指している。製造上の問題は、説明するのは簡単だが、解決するのは難しい。ウェーブガイドの製造には、ガラス基板上への精密な薄膜の成膜、CNC工作機械による切断、光学部品として要求される精度での研磨が必要となる。TrendForceのサプライチェーンデータが示すように、これは複雑かつ高精度な工程であり、大規模生産では歩留まりが低い。SCHOTTは専用工場の建設に数年を費やし、MetaがRay-Ban Displayグラスを発売する前日に量産能力の確立を発表した。それでも生産量は限られている。Metaが当初のウェーブガイド発注量を87.5%引き上げ、約15万個とした際には、ただちに供給のボトルネックが発生し、製品の海外展開が遅れる結果となった。カリフォルニア州サンタクララに本拠を置くApplied Materialsは、世界中の高度な半導体チップやディスプレイの製造に使われる成膜、エッチング、プロセス制御装置を手がけており、まさにこの状況を変え得るパートナーである。同社の装置はすでに、半導体およびフラットパネルディスプレイ産業向けの精密基板に薄膜処理を施している。これはウェーブガイド製造に必要な材料工学と同じ領域であり、特殊光学ガラスメーカーが消費者向けの生産規模では実現できていないスループットと歩留まり管理を可能にする技術である。2026年6月16日、エシロールルックスオティカとApplied Materialsは、次世代ARおよびAI搭載スマートアイウェア向けの「拡張可能な光学プラットフォーム」を構築するため、長期共同開発契約を発表した。Applied Materialsのシリコンバレーキャンパスには、専用の共同研究ラボも設置された。Applied Materialsの社長兼CEOであるGary Dickerson氏は、戦略的な狙いについて「次世代スマートグラスを設計、構築し、量産規模へ拡大するには、テクノロジーエコシステム全体にわたる緊密な協力が必要になる」と説明した。この提携が示唆するのは、公表された研究開発目標だけではない。エシロールルックスオティカが、ウェーブガイド製造工程の重要な要素を開発し、最終的に自ら掌握するための能力を構築しようとしているということだ。年間2000万台という目標に対応できるほど迅速に生産能力を拡大できない外部の特殊部品サプライヤーへ無期限に依存するのではなく、供給網の自立性を高めようとする取り組みでもある。■第2の成長エンジンとしての近視管理エシロールルックスオティカの2026年上半期業績において、構造的な成長を牽引しているのはAIグラスだけではない。同社の近視管理製品群は、第1四半期の26%増に続き、第2四半期も24%の収益成長を記録した。2四半期連続で、同社全体の業績に最も安定して貢献する事業の1つとなった。近視は米国人口の約40%にみられ、米国国立眼病研究所は、2050年までに世界人口の半数以上が近視になる可能性があると予測している。近視の有病率は特に小児や青少年の間で急速に上昇している。なかでも東アジア市場では、若年層の近視率がすでに70〜80%を超えており、小児向け視力管理への継続的な需要を生み出している。強度近視は、矯正されなかったり管理が不十分だったりすると、後年に網膜剥離、緑内障、黄斑変性症を発症するリスクを高める。エシロールルックスオティカのStellestレンズは、HALT(Highly Aspherical Lenslet Target)設計によってこの問題に対処する。通常の視力矯正を担う直径9mmの中心部を、1000個以上の同心円状の微小レンズが囲み、「周辺近視性デフォーカス」を作り出す構造だ。これは、眼軸長の伸びを遅らせるよう眼が受け取るとみられる光学的な信号である。6年間にわたる臨床試験で、Stellestは近視の進行を57%抑え、眼軸長の伸びも抑制した。2年間の試験では有効性が71%に達した。FDA(米国食品医薬品局)は2025年9月、米国の6歳から12歳の小児を対象としてStellestを認可した。近視の進行抑制を適応とする眼鏡レンズとしては、FDAが初めて認可した製品となった。この業績の傾向は、AIウェアラブルと医療用途の小児向け視力ケアを組み合わせるという、エシロールルックスオティカの「2つの成長エンジン」戦略が想定通りに機能していることを示唆している。■地域別業績:特定の市場に依存しない成長2026年上半期の成長は、エシロールルックスオティカのグローバルな事業基盤全体に広く分布していた。同社最大の単一市場である北米は、第1四半期に恒常為替レートベースで12.5%の成長を記録した後、第2四半期も1桁台後半の成長を示した。欧州・中東・アフリカ(EMEA)と中南米も、第2四半期に1桁台後半の伸びを記録した。アジア太平洋地域は2桁成長となった。同社は店舗の拡大や専門家との提携を通じて、この地域への投資を続けている。小売事業の既存店売上高は第2四半期に8.0%増加し、視力矯正用眼鏡とサングラスの両部門が同程度に貢献した。これは、AIグラスの好調さが、グループ全体の店舗への来店を促している兆候である。同社はLensCrafters、Sunglass Hut、Vision Expressのほか、Top Charoenの買収によってタイで新たに加わった約2000店舗を含め、世界で約2万店舗を展開している。■今秋の競争激化に向けて読者が知っておくべきことエシロールルックスオティカが優位に立つ市場には、まもなく競合が相次いで参入する。Googleは5月のI/Oカンファレンスで、Warby ParkerとGentle Monsterが生産するAIオーディオグラスを発表した。両モデルはGemini 2.5 ProとAndroid XRを採用し、Samsungがハードウェア設計を担当する。そのプラットフォームを製品化したSamsung Galaxy Glassesは、エシロールルックスオティカの決算発表の5日前に当たる7月22日に登場した。ディスプレイは搭載せず、Android XRを介してGeminiを利用する。Google、Warby Parker、Gentle Monsterによるモデルは、一部市場で「今秋」に発売されると見込まれている。この競争環境は、購入者に「待つべきか、今購