フロンティアAIモデルのリリースに対する米国政府の監視枠組みの正式な期限が8月1日に迫るなか、OpenAIとAnthropicが水面下でルール形成に動いていると報じられている。The Informationの報道によれば、両社はMetaやxAIなどの競合他社にも適用される、最も強力なAIモデルを対象とした統一的な連邦審査プロセスを採用するようトランプ政権に働きかけているという。もっとも、両社が枠組みに盛り込むよう求めている条件の全容は公表されておらず、審査対象を決める能力基準など、重要な点は未確定である。■競合他社にも適用される統一ルールを要求この連携が報じられた同日、Bloombergの報道によれば、OpenAI、Anthropic、Google、Metaと、ほかの約12社の従業員1,100人以上が、AI開発のペースを意図的に調整する国際的な仕組みを支持するよう米国政府に求める公開書簡を回覧した。彼らは、AIが人々の「理解や制御」を超える速さで進歩する「現実的なリスク」があると警告している。7月28日のこれら2つの動きは、8月1日の期限を前にした米AI業界の立場を、これまでで最も明確に示すものとなった。主要なAI研究所は予測可能なルールを求め、そのルールがすべての企業に適用されることを望んでいる。同時に、そうした企業で働く相当数の従業員も、技術の進歩がガバナンスを追い越しつつある可能性を公に認めている。■ライバル企業の共通の立場と競争上の論理OpenAIとAnthropicは、本来、自然な協力関係にあるわけではない。両社は同じ企業顧客を対象に競合するAIプラットフォームを販売し、研究者や計算資源を奪い合い、オープンアクセスからモデル安全性に関する考え方まで、さまざまな問題で大きく異なるアプローチを取ってきた。両社とも汎用AIシステムを販売し、企業契約、研究者、計算能力、投資をめぐって競争している。どちらの企業も、業界全体に適用する審査基準案に盛り込みたい条件の全容を公表していない。しかし、両社の共通の立場は明確である。リリース前の審査基準は、すでにワシントンとの関係を築いている企業だけに限定せず、業界全体に適用すべきだというものだ。MetaやxAIのモデルも、基準が最終的にどのようなものになるにせよ、能力の閾値を超えれば同じ枠組みの対象となる。この連携の背後にある競争上の論理は理解しやすい。連邦政府の審査が一部のフロンティアAI開発企業にだけ適用され、ほかの企業には適用されなければ、枠組みの外にいる企業は、政府に協力する企業に課される監視を受けずに、強力なモデルをより早くリリースできる可能性がある。統一基準を設ければ、この非対称性を解消できる。草案には明記されていないが、規制の取り込み、いわゆるregulatory captureに関する研究が示すのは、この力学の裏側である。プロセスの内部で閾値の定義を共同作成することにより、OpenAIとAnthropicは、協議の場に加わっていない競合他社にはない構造的な優位性を得る。この枠組みには、最大手のAI研究所2社が重要だと考える能力、リスク、ベンチマークが反映されることになる。Pareekh ConsultingのCEOであるPareekh Jainは、小規模開発者のテスト負担に関する分析で、この点を直接指摘した。「テストには費用と時間がかかるため、Anthropic、Google、OpenAIのような規模が大きく、十分な資金を持つ企業は負担できる。最先端のオープンウェイトモデルをリリースしようとする小規模な開発者は、同じ要件を満たすのに苦労する可能性がある」■大統領令14409号が創設したものと制限しなかったものこれらすべての法的基盤となっているのは、2026年6月2日に署名された大統領令14409号「高度な人工知能のイノベーションとセキュリティの促進」である。この大統領令は、国家安全保障局(NSA)、サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)、財務省、ホワイトハウスの国家サイバー長官および科学顧問に対し、60日以内に2つの仕組みを構築するよう指示した。1つは、どのAIシステムが「対象フロンティアモデル」に該当するかを判断するための機密ベンチマークプロセスであり、もう1つは、それらのモデルをリリース前にどのように審査するかを定める自主的な枠組みである。機密ベンチマークは、モデルの高度なサイバー能力、具体的にはソフトウェアの脆弱性を自律的に発見し、悪用する能力に焦点を当てている。指定を決定する権限はNSA長官が単独で持ち、基準は公表されず、開発者が利用できる異議申し立て手続きも設けられていない。閾値を超えた開発者については、モデルをほかのパートナーと共有する前に、政府が最大30日間アクセスして審査できる。大統領令には、慎重に言葉を選んだ1つの保証が含まれている。それは、この命令のいかなる部分も、AIの開発またはリリースについて「政府による義務的なライセンス、事前審査または許可の要件」を創設するものではないという規定だ。この表現は、大統領令そのものの説明としては正確である。しかし、政府が利用できる手段の全体像を説明するものではない。2018年輸出管理改革法(ECRA)は、商務省産業安全保障局(BIS)に対し、新たな法律、新たな大統領令、公開通知がなくても、AIモデルを国家安全保障に不可欠な規制対象の新興技術として指定できる独立した権限を与えている。Foley HoagによるBISの権限分析と、WilmerHaleによる自主的枠組みの分析は、ともに、大統領令14409号の「自主的」な構造は意図的な政策判断を反映したものであり、既存の法的権限の限界を示すものではないと指摘している。政府は、自主的な枠組みが存在する前から、既存の権限を行使できることをすでに示していた。■6月の事例が示す「自主的」の実態大統領令の文言と実際の効力との隔たりは、署名後ほぼ即座に明らかになった。2026年6月12日、Anthropicは「Claude Fable 5」と「Mythos 5」をリリースした。それから約24時間以内に、商務省はジェイルブレイクを理由とする指令を出した。ジェイルブレイクとは、プロンプトなどを使ってモデルに安全上の制限を回避させる手法であり、この事例では、モデルが通常は提供を拒否する高度なサイバー攻撃能力に関する情報へアクセスできるようになったとされた。当時のアクセス停止に関する記録によれば、両モデルへのグローバルなアクセスが停止された。Anthropicはこの措置に公に異議を唱え、限定的なジェイルブレイクの可能性だけを理由に、すでに世界で展開されているモデルを撤回すべきではないと主張した。対立は約3週間続いた。Anthropicがクラウドパートナーと共通のセキュリティ基準に取り組み、リスク検出に積極的に協力することに同意したうえで、6月30日にセキュリティ協定が成立し、アクセスは回復した。超党派のAI安全推進団体Public Firstの代表Brad Carsonは、事後にこの出来事を振り返り、「Fableの一件は明確な規制が必要であることを示している。現在は場当たり的で、属人的で、不透明で、おそらく違法なアプローチが取られている」と評価した。Mayer Brownの輸出管理分析に携わった法律専門家は、商務省の措置について、輸出管理規則(EAR)が、モデルの重みやソースコードだけでなく、AIモデルそのものに規制対象品目として適用された最初の事例である可能性があると指摘している。Anthropicの一件から2週間後、ホワイトハウスはOpenAIに対し、名目上は自主的な形で、「GPT-5.6 Sol」のリリースを政府の審査を受けたパートナーに限定するよう求めた。理由として、その高度なサイバーセキュリティ能力が挙げられた。OpenAIのCEOであるSam Altmanは従業員に対し、政府が顧客ごとにアクセスを承認していると伝えた。GPT-5.6 Sol、Terra、Lunaは、12日間のアクセス制限付きプレビューを経て、7月9日に広く利用可能になった。混乱を伴い、不透明で、公開済みの枠組みの外で実施されたこの2つの事例こそ、両社が現在、予測可能で公表されたルールに置き換えようとしているものである。リリース後ではなくリリース前に統一プロセスを適用すれば、開発者はどの時点で政府によるテストが求められるのかについて明確な指針を得られ、商用展開後に場当たり的なアクセス停止を受けるリスクをなくせる。■NSA以外には確認できない機密の閾値枠組みの交渉における最も難しい未解決問題は、フロンティアモデルを審査するかどうかではない。どのモデルを審査するかである。機密のNSAベンチマークプロセスによって決定される能力の閾値こそが、枠組みの実際の適用範囲を左右する。NSAが運営するTRAINS(国家安全保障に関するAIリスクのテスト)プログラムは、商務省の国立標準技術研究所(NIST)内にあるAI標準・イノベーションセンターの下に置かれており、10を超える連邦機関と10の国立研究所が参加して、展開前の評価を実施している。英国のAIセーフティ研究所は、Five Eyesの情報共有同盟と協力し、フロンティアモデルが専門家レベルのサイバーセキュリティに関するキャプチャー・ザ・フラッグ(CTF)課題に73%の確率で成功するというベンチマークを文書化した。これは、2025年4月より前には、どのモデルも到達できなかった能力水準である。閾値を高く設定すれば、ほとんどのフロンティアモデルは妨げられることなくリリースできる。低く設定すれば、最大30日間の審査期間が、変化の速い市場における大きな商業的コストとなる。開発者も外部研究者も、境界線が正確にどこに設定されているかを知ることはできない。基準は機密であり、今後も機密のままとなる。開発者が意図せず閾値を超え、事前の警告なしに審査期間の対象となる可能性もある。TRAINSに参加している5つの研究所、OpenAI、Anthropic、Google、Microsoft、xAIは、CVSSをモデルにした共通のジェイルブレイク深刻度評価システムの構築に取り組んでいる。CVSSは、ソフトウェアセキュリティ業界で脆弱性の深刻度を分類するために使われる枠組みである。この共通評価システムは、6月にAnthropicのアクセス停止を引き起こしたような事案について、政府と業界に共通の用語と尺度を提供する。Anthropicに約3週間にわたる世界規模のサービス停止をもたらした、個別交渉の繰り返しを防ぐことが狙いである。■オープンウェイトAIという枠組みの構造的な死角業界全体の審査基準を求めるOpenAIとAnthropicの動きは、オープンウェイトAIモデルをめぐる、別の関連した政策論争と並行して進んでいる。オープンウェイトモデルとは、基盤となるモデルの重みが公開され、第三者がダウンロード、変更し、自らのインフラで展開できるシステムである。7月24日、Nvidia、Meta、Microsoftなど25の組織が、「オープンウェイトと米国のAIリーダーシップ」と題する公開書簡を発表した。書簡は、中国とのAI開発競争が激化するなか、米国の競争力を弱めかねない規制に警告を発している。IBM、Palantir、Mistral、Hugging Face、Mozilla、Andreessen Horowitz、Linux Foundationを含む25の署名者は、技術全体を一律に規制するのではなく、悪用を対象とした法的措置や商業的措置を求めた。NvidiaのCEOであるJensen Huangは、Xへの自身初の投稿でこの書簡を取り上げ、オープンモデルは「安全性とサイバーセキュリティを強化し、イノベーションと普及を加速させ、主権を可能にする」と記した。この投稿は数時間で1,