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【分析】米Broadcomの2300億ドル提携をどう見るか――AI半導体の競争優位性と株価低迷の理由
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財経新聞:最新ニュースフィード
米半導体大手ブロードコム(Broadcom)は、韓国の半導体・電機大手サムスン電子(Samsung Electronics)との2000億ドル(約32兆8000億円)規模の覚書(MOU)締結など、わずか3週間で総額2300億ドル(約37兆7200億円)を超える新たな提携を発表した。しかし、同社株は直近高値を約24%下回る水準で取引されている。本稿では、市場が懸念するGoogleへの顧客集中や利益率の低下と、カスタムチップ事業の競争優位性を検討する。■2300億ドル超の提携と株価評価の隔たりBroadcom(NASDAQ:AVGO)は7月25日、今年最大となる半導体分野の提携に合意した。Samsung Electronicsとの5年間、2000億ドル(約32兆8000億円、1ドル=164円換算)規模の覚書(MOU)で、2030年まで、BroadcomのAIアクセラレータ向けの2ナノメートル・プロセスによるファウンドリ製造、次世代HBM4メモリの供給、高度なチップパッケージングを対象とする。サンフランシスコで開かれたAIサミットで発表され、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と両社の幹部が出席した。その3週間前には、Appleが2031年まで、Broadcomの米コロラド州フォートコリンズ工場から無線接続用チップを調達する、300億ドル(約4兆9200億円)超の別のコミットメントを確認していた。わずか3週間で、Broadcomが発表した新たな提携の総額は2300億ドル(約37兆7200億円)を超えた。それでも同社株は、直近高値の495ドルを約24%下回る水準で取引されている。事業が獲得している提携の規模と、市場が株式に付けている価格との隔たりは、現在のBroadcom投資家にとって中心的な論点である。その答えは、6月の決算発表後に広がった「Googleへの顧客集中」という見方だけでは説明できないほど複雑だ。■記録的な四半期決算と予想外の株価下落6月3日に発表されたBroadcomの2026年度第2四半期決算は、ほぼあらゆる財務指標で極めて好調だった。売上高は前年同期比48%増の過去最高となる221億9000万ドル(約3兆6392億円)に達した。AIチップおよびネットワーク関連の売上高は143%増の108億ドル(約1兆7712億円)となり、半導体売上高全体の約半分を占めた。調整後1株当たり利益(EPS)は2.44ドルで、ウォール街の市場予想である2.40ドルを上回った。CEOのホック・タン氏は決算説明会で、BroadcomのカスタムAIアクセラレータとネットワーク製品に対する需要は「まさに飽くことを知らない」と述べた。同四半期のAIチップ受注額は300億ドル(約4兆9200億円)を超えたのに対し、実際の出荷額は108億ドルだった。これは、需要が同社の供給能力を大きく上回っていることを示す構造的な受注残である。第3四半期のガイダンスでは、連結売上高を前年同期比84%増の294億ドル(約4兆8216億円)と見込む。AI半導体売上高は、前年同期比200%超の増加となる160億ドル(約2兆6240億円)に達する見通しだ。同社は、2026年度通期のAI半導体売上高目標を、2025年度比約180%増の560億ドル(約9兆1840億円)に据え置いた。また、2027年度のAI半導体売上高が1000億ドル(約16兆4000億円)を超えるとの見通しも改めて示した。こうした数字にもかかわらず、AVGO株は時間外取引で急落した。市場が注目したのは、経営陣が示した2点である。1つは、Broadcom最大のカスタムチップ顧客であるGoogleが、今後は複数のチップサプライヤーを利用する可能性が高いこと。もう1つは、AIチップ売上高の急増によって同社の粗利益率が低下していることだ。■Google問題:市場の懸念とデータが示すものGoogleを巡る懸念は、決算発表翌日のMacquarieによる投資判断の引き下げで鮮明になった。同社のアナリスト、アーサー・ライ氏はBroadcomの投資判断を「アウトパフォーム」から「ニュートラル」に引き下げ、目標株価も513ドルから437ドルへ引き下げた。その理由として、MediaTekの役割拡大とGoogleによる自社シリコン開発の進展に伴い、GoogleのカスタムAIチップ売上高に占めるBroadcomのシェアが、2026年の約95%から2027年には80%、2028年には65%へ低下するとの予想を挙げた。同じ時期の複数の報道によると、MediaTekはGoogleの次世代Tensor Processing Unit(TPU)の強化版開発を支援する契約を獲得したという。Broadcom株は決算発表前までに年初来で約40%上昇し、発表前日の取引を過去最高値の481.57ドルで終えていた。それだけに、この格下げの影響は大きかった。一方、反論も具体的なデータに基づいている。Broadcomは主要なカスタムチップ顧客として6社を公表しており、2026年度第1四半期にはOpenAIが新たに加わった。4月7日、BroadcomとGoogleは、Anthropic向けの3.5ギガワット規模のTPUコンピューティング契約とは別に、2031年までの長期供給保証契約を締結した。2026年にAnthropic向けに稼働している1ギガワットに加え、2027年から約3.5ギガワット分の次世代Google TPU能力が稼働することになる。Mizuhoのアナリストは、Anthropic関連のコミットメントだけで、Broadcomに2026年に210億ドル(約3兆4440億円)、2027年に420億ドル(約6兆8880億円)のAI売上高をもたらす可能性があると推定している。これとは別に、OpenAIとの10ギガワット規模の共同開発契約があり、2026年後半から2029年末まで続く。6月24日にOpenAI初のカスタム推論チップ「Jalapeño」が発表され、現在はハードウェア開発段階にある。Jalapeñoは大規模言語モデルの推論処理特性に合わせて設計され、Broadcomのチップ設計チームとの協力により、構想からテープアウトまで9カ月で開発された。Macquarie自身も、2028年の利益予想を引き下げる一方、2026年と2027年の予想は引き上げた。つまり、議論の焦点は翌年ではなく、2020年代後半にある。■ASIC共同設計モデル:見かけほど競争優位性を崩しにくい理由Google向けシェア低下のリスクを認めながらも、多くのアナリストが「買い」評価を維持する理由を理解するには、Broadcomのカスタムチップ事業の仕組みを見る必要がある。同社を担当するアナリスト29人のコンセンサス評価は「ストロング・バイ」で、平均目標株価は約500ドルだ。Broadcomは、単にハイパースケーラーへチップを供給しているのではない。各顧客の組織内にエンジニアリングチームを配置し、通常18~24カ月に及ぶ設計サイクルを通じて、顧客固有のAIワークロードに合わせたチップアーキテクチャを共同開発する。対象となるのは、Googleの学習処理とOpenAIの推論サービスを区別するカーネル処理の特性、メモリ転送の手順、推論遅延の要件などだ。こうしてできる半導体はXPUと呼ばれる。Xは対象となる任意の用途を表し、XPUは特定の処理群に特化して設計される。CUDAプログラミング基盤を利用し、さまざまなワークロード向けに再プログラムできるNvidiaのGPUとは異なり、XPUは特定の演算に最適化される。Evercoreの分析によれば、この特化により、同等のGPUワークロードと比べて推論1回当たりのコストを40~65%低減できるという。実務上、ハイパースケーラーがBroadcomとの複数年にわたるチップアーキテクチャ共同開発に数億ドルを投じた後、その関係を他社へ切り替えるには、設計サイクルを一からやり直さなければならない。この構造的な切り替えコストは、単純な市場シェアの比率には表れない。EvercoreとTechTimesの分析によれば、Google向けシェアが95%から65%へ低下するとの予想は、BroadcomがGoogle関連事業を失うことを意味しない。Googleが一部のチップ派生品で第2の設計パートナーとしてMediaTekを加える一方、ほかの派生品ではBroadcomとの関係を維持し、正式な契約を2031年まで延長するという意味だ。XPU設計事業に加え、BroadcomのTomahawkおよびJerichoネットワーク半導体は、第2四半期のAIチップ売上高の約40%、約43億ドル(約7052億円)を生み出した。これらは、AIクラスター内にある数千基のアクセラレータ間のデータ転送を調整するスイッチチップである。Tomahawk 6は毎秒102.4テラビットのスイッチング容量を備え、Broadcomによれば業界最高水準である。同社のUltra Ethernet戦略はオープン標準を採用し、Nvidia独自のInfiniBandと競合する。AIクラスターが、10万基以上のアクセラレータを連携並列動作させるギガワット級へ拡大するにつれ、ネットワーク層は演算層と同程度に戦略的重要性を増す。Broadcomは、主要ハイパースケーラーのネットワーク基盤の多くに採用されている。7月25日に締結されたSamsungとのMOUは、垂直統合という第3の構造的要素を加える。MOUに基づき、SamsungはBroadcomへHBM4およびHBM4Eの広帯域メモリを供給するほか、平沢(ピョンテク)工場で2ナノメートル未満のプロセスを使ってBroadcomのAIチップを製造し、最終製品を組み立てるための次世代2.3Dおよび2.5D先端パッケージングを提供する。先端パッケージングは、チップの構成要素を積層するなどして実装密度を大幅に高め、相互接続の遅延を減らす技術であり、AIハードウェア生産の重大なボトルネックになっている。Broadcomが、主要な製造委託先であるTSMCとの関係を補完する形でSamsungのパッケージング設備を利用できれば、世界的に先端パッケージング能力が不足するなか、サプライチェーンの集中リスクを軽減できる。ただし、この合意はMOUであり、法的拘束力のある契約ではない。また、Samsungの2ナノメートル・プロセス技術は、量産に必要な歩留まりをまだ達成していない。いずれも無視できないリスクである。■利益率、ソフトウェア、そして事業構成の変化が危機ではない理由Broadcomのビジネスモデルに関する根強い誤解の1つは、粗利益率の低下を事業構造の悪化と捉えることだ。しかし、これは意図的な製品構成の変化によって生じる会計上の現象である。VMwareの統合を柱とするBroadcomのインフラストラクチャ・ソフトウェア部門は、半導体部門よりも一貫して高い粗利益率を上げている。AIチップ売上高が3桁の伸びを続け、総売上高に占める比率が高まると、利益率が相対的に低い半導体事業の影響で全社の粗利益率は低下する。一方で、利益の絶対額は急速に増加し得る。第2四半期の調整後EBITDAは152億ドル(約2兆4928億円)で、売上高の69%を占めた。金額、売上高比率ともに過去最高だった。第3四半期の粗利益率を約74%とするガイダンスは、価格下落やコスト上昇ではなく、こうした事業構成の変化を反映している。ソフトウェア事業は、事業全体の安定性を支えている。第2四半期のインフラストラクチャ・ソフトウェア売上高は前年同期比9%増の71億8000万ドル(約1兆1775億円)だった。アナリスト予想の73億2000万ドルをわずかに下回り、決算後の株価下落の一因となった。一方、フリーキャッシュフローは103億ドル(約1兆6892億円)に達し、総売上高の46%に相当した。事業構成が変化するなかでも、営業利益率は四半期を