こうした交流は、単にスキルを身につけるだけでは得られない価値を生んでいます。会社や世代を超えたネットワークが広がり、互いの課題や悩みを共有できる場が生まれることで、グループ全体としてのシナジーが育まれているのです。さらに、卒業後のフォローにも力を入れています。修了生が集う社内バーチャルコミュニティを立ち上げ、定期的にオンラインで意見交換をしたり、時にはオフラインで集まったりしています。このようにしてつながりを保つことで、どの部署にいても「困った時に相談できる仲間がいる」状態をつくりたいと考えています。そうしたネットワークが社内に広がれば、個人が抱える課題や悩みを、仲間との対話を通じて解決につなげる“学びの循環”が生まれるはずです。これこそが、私たちが目指す人財育成の理想形だと思っています。——経営層に対する人財育成の取り組みについてお聞かせください。実際に育てた人財が十分に力を発揮できない要因の一つに、経営層を含むリーダー層が育成プログラムの意義や目的を十分に理解していないという課題があると感じています。そこでJFRグループでは、社長をはじめとする経営層を対象に、独自のデジタル教育プログラムを設計・実施しています。プログラムの一部には一般社員向けの内容も取り入れていますが、経営層向けに新たに設計したオリジナルの構成も含まれています。全体で3日間にわたる研修を、大丸、松坂屋、パルコなど主要事業会社の経営層に対して行い、私自身が講師として登壇しました。ここで重視しているのは、「共通のマインドを持つこと」です。どれほど優れた戦略や仕組みがあっても、根本となる考え方が一致していなければ、意思決定のスピードや方向性にばらつきが生じてしまいます。たとえば「良い仕組み」と言っても、人によってその定義や評価軸は異なります。しかし、「この仕組みは、こういう意識のもとで設計された」という共通の理解があれば、その背景にある価値観や目的を共有でき、議論が建設的になります。こうした共通認識の形成は、「デジタルデザインや業務改革に取り組む現場の人財の努力を正しく評価できる文化の醸成」にもつながります。経営層が同じ視座を持ち、同じ言葉で議論できるようになることで、組織全体が一体となって前進できるのです。そのため、JFRグループでは経営層向けのプログラムを単発では終わらせず、継続的な学びの仕組みとして運用しています。経営と現場が同じ方向を向き、共通のマインドを持ってデジタル改革を推進できる体制を築くことが、この取り組みの目的です。イノベーションの花を咲かせたいなら、まず土壌から——これまで受けたアドバイスの中で印象に残っている言葉をお教えください。一つに絞るのは難しいのですが、Peach Aviation時代にいただいたアドバイスの中で、今も心に残っている言葉があります。世界のLCC業界で“レジェンド”と呼ばれるパトリック・マーフィーさんという方がいらっしゃいます。当時、数カ月に一度お会いしてプロジェクトの進捗を報告し、アドバイスをいただく機会がありました。そのマーフィーさんからかけてもらった言葉が、今も私の指針となっています。それは、「イノベーティブな取り組みで花を咲かせたいのなら、まずイノベーティブな土壌をつくりなさい」というものです。会社という組織では、どうしても「花」や「実」——つまり目に見える成果をすぐに求めがちです。しかし、どれほど優れたアイデアや施策でも、それを支える土壌がなければ根を張ることはできません。マーフィーさんはそのことを、シンプルな言葉で教えてくれました。この「土壌」とは、部署や組織によって意味が異なります。文化やマインドのようなソフト面もあれば、システムでいえば基盤やインフラの整備にあたる部分でもあります。どちらにしても、良い基盤がなければ、その上にあるアプリケーションや仕組み、さらには人の行動までもがうまく機能しません。これは企業経営でもIT設計でも共通する真理だと思います。この言葉を聞くまでは、私自身も「どうすれば良い花を咲かせられるか」という成果志向でデザインを考えていました。しかし今では、まずは良い土壌をつくること、つまり人と仕組みの双方が成長できる環境づくりを重視しています。後編では、育成した人財と共通のマインドを事業横断の価値へどうつなげるのかを探るとともに、ホールディングス視点でデータを束ね、ビジネスの最大化につなげる方法に踏み込みます。